2025-12-27
ゆいぽーとでは、滞在型の創作活動を行う芸術家等を国内外から募集、支援することで、創造性に富んだ人材が集まりやすい環境づくりを進め、新潟市の魅力を国内外に発信することと共に、滞在する芸術家等と市民が交流することで地域の自然や歴史、文化の魅力を再発見し、地域の誇りづくりや愛着づくりにつなげることを目的に、アーティスト・イン・レジデンス事業を実施しています。
この度、「自主活動プログラム2026冬季」及び「招聘プログラム2026春季」の滞在アーティストが決定いたしましたのでお知らせいたします。
プログラム期間中、ワークショップ等の交流イベントを開催しますので、ぜひお気軽にご参加ください。(内容は決定次第イベントページへアップ致します。詳細はイベントページをご確認ください。)
■ 自主活動プログラム2026冬季
丸山 千香子 Chikako Maruyama
東京都出身・在住
ジャンル|ソフトスカルプチャー
滞在期間|2026年1月14日(水)~2月12日(木)/30日間
インスタグラム ▶
@maruyama.chikako
<プロフィール>
東京都生まれ。1994年短大卒業後にディスプレイデザイン会社に入社。2003年フリーランスのディスプレイデコレーターとして活動ののち造形家となる。2023年美学校芸術漂流教室終了。2025年第28回岡本太郎現代芸術賞入選。現在、東京都西東京市在住2児の母。
友達が欲しい、育児の閉ざされた生活で望む欲から作品が産まれた。自身の望む欲に関心があり制作の基となっている。自己実現・承認欲求・社会的欲求などの他者はどう感じているのか、男女や世代、置かれている立場によっての差異に興味を寄せている。人の心のあわいを表現、制作する。
<滞在制作プラン>
常に開かれた場として公開する。土地の人々にリサーチをし関わりを持ちながら制作を行う。気軽にお茶を飲みに行く感覚で訪れて欲しい。訪れた人々は性別や世代によって価値観に偏りがあるのか、雪国の古風な人間性などの地域特性があるのか、共同幻想なのかをリサーチする。義父は新潟出身、同じ感覚の人と出会えるか。子育て中に孤独や焦りを感じた。共働きや家事分担は世代間で感覚は変わると思うが、この土地も同じなのか。働き方や社会との関わりなどに関しても開かれた場にする。共感者などと協働で作品へと表現し可視化した空間を作り、今後の社会のあるべき姿は何かと一石を投じたい。
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石黒 香 Kaori Ishiguro
群馬県出身・ベルギー在住
ジャンル|身体表現、彫刻、インスタレーション、テクスト、映像
滞在期間|2026年1月28日(水)~2月13日(金)/17日間
ウェブサイト▶
https://kaoriishiguro.weebly.com/
インスタグラム ▶
@kaorishiguro
<プロフィール>
ベルギーを拠点に活動するダンサー、アーティスト。日本女子体育大学にてダンスの学士を取得後、2016年に渡欧し、アントワープ王立音楽院でコンテンポラリーダンスの学士を取得。現在は様々な媒体を用いた制作に専念している。彼女の作品はパフォーマンスアートの領域に属し、身体的・感覚的な文脈で自他の親密な境界を探求する。観客との明白なインタラクションではなく、同じ瞬間を共にする体験を通じて境界を解きほぐし、「今ここ」に存在することの重要性を示す。観客は他者を観察することで自らの存在や相互接続性に気づき、作品とともにその感覚を深めていくことを目指している。
<滞在制作プラン>
この滞在では、ベルギーで取り組んでいる「Tenderness of the Stones」の継続リサーチを行います。本プロジェクトは、石を媒介に孤独を「自己との対話」として捉え直し、他者や世界との再接続を探る没入型の実践です。新潟では県の石である翡翠や佐渡赤玉石、さらに地域特有の石にまつわる物語や文化を調査し、人々の暮らしの中にある石の存在性を考察します。また、公共空間や自然環境を舞台に、身体と石の関係を実験的に探り、パフォーマティブインスタレーションとして展開する可能性を模索します。また、地域人々と共に手で石を作るワークショップを行い、プロセスを共有しながら、内省と共感が生まれる柔らかな場を創出します。
■ 招聘プログラム2026春季
アニタ・ガラッツァ Anita Gratzer
オーストリア出身・群馬県在住
ジャンル|写真、衣装デザイン、パフォーマンス
滞在期間|2026年4月21日(火)~6月30日(火)/71日間※予定
ウェブサイト ▶
www.anita-gratzer.net
<プロフィール>
オーストリア・アルプスで育ったアニタ·ガラッツアは、白黒フィルムを使ったアナログ写真家、そしてネガに直接描くプロの芸術家としてのキャリアをスタートさせ、のちに、リンツ芸術大学に入学、優秀な成績で卒業した。服装とは、自分自身を表現する方法であるが、アニタ·ガラッツアは、服装を、単にデザインされた身に纏うもの以上のものとして捉えている。つまり、衣服は、歴史的な慣習に基づいており、文化的で自分らしさを表現するものである、と考えている。大昔の和紙(手書きの文字が書かれた帳面など)の中には、歴史の古さ、その時代感、どこで、何のために書かれたものか、という情報が詰まっている。それらを丸ごと使って、持ち運べる建築へと変化させ、身につける人のシェルター(その人を包み、保護するもの)となったり、人工装置のような作品ともなる。彼女が作り出す作品は、単に身に纏うものではなく、物語を着る、知識を着ているのである。それは、身体、言葉、そして芸術表現の境界を曖昧にしていく取り組みでもある。
<滞在制作プラン>
私はこれまで、バウハウスの教師オスカー・シュレンマーによるバレエ作品《トリアディック・バレエ(Triadic Ballet)》の歴史的要素について研究を続けてきました。新潟では、シュレンマーの独創的な発想や、「身体と空間の関係性」という彼の原理をふまえた 3点の衣装作品 を制作したいと考えています。これらの衣装は、新潟の工芸や文化的要素との出会いを通して、新たなかたちへと変容していきます。
これらの身体的要素(ボディ・エレメント)は、数百年の歴史をもつ紙、絹、麻といった素材から制作され、新潟の海岸で行うパフォーマンスおよび写真撮影に使用されます。
制作地の環境や再利用素材から着想を得た本作品は、環境への意識(エコロジカル・アウェアネス) をテーマとして内包しています。パフォーマンスはアーティスト・川島一恵(群馬県在住)、映像撮影はマヌ・シレ(群馬県在住)が担当します。
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ランディ・リネイト Randi Renate
アメリカ出身・在住
ジャンル|彫刻・インスタレーション
滞在期間|2026年4月27日(月)~6月30日(火)/65日間※予定
ウェブサイト ▶
www.randirenate.com
<プロフィール>
生物学と海洋学のバックグラウンドを持つ、リサーチを基盤とした実践を行う、マルチメディア・アーティスト。インスタレーション、彫刻、ドローイング、フィールドワークなど、多様な手法で彫刻的な枠組みを用いて、生態学的・認知的・建築的システムがどのように絡み合っているかを探究している。彼女の実践は、種間の関係性や共生コミュニティにおける身体的なつながりを調査し、海洋的意識と環境への理解や保全を促す視点を提示している。
アメリカのイェール大学芸術大学院彫刻専攻でMFAを取得。これまでに、ニューヨークなどの数多くのフェローシップやレジデンスを受けている。
作品《blue is the atmospheric refraction I see you through》(2021)はアディロンダック歴史博物館に収蔵されており、また、2022年のソクラテス彫刻公園での野外彫刻展で発表した公共彫刻作品は、アメリカの国際的な彫刻専門誌「Sculpture Magazine」に取り上げられた。また、アートと科学の関係性に焦点をあてたポッドキャスト 「CORALESCENCE」 を制作するなど、分野横断的な活動を展開する。
<滞在制作プラン>
滞在中は、新潟や日本海の特有の海岸環境を出発点として、新たなリサーチベースの作品制作に取り組む予定です。海岸線や潮の満ち引き、海洋生物を観察し、新潟市水族館や、新潟大学佐渡自然共生科学センター臨海実験所の研究者と連携しながら、地域の生物について理解を深めたいです。
ゆいぽーとでは、これらの観察をもとにした形態や素材の実験を行い、後の大規模作品につながる小さな彫刻的試作を制作していきます。また、地域で入手できる素材を活用し、この土地の自然環境と文化的背景に呼応する形を探求します。
こうしたプロセスを通して、滞在スペース内にインスタレーション作品を構築する予定です。それは、人間と海洋環境の相互依存とつながりをテーマとし、日本海を臨む空間の中で、訪れた人が海との関係性や海洋生態系の大切さについて思いを巡らせる「休息と内省の場」となることを目指します。